【農薬】というものに対して、現代では様々な意見が述べられておりますが、
現状、農薬の利用は病害虫防除の根幹であり、農作物の安定供給のためになくてはならない存在です。
今回は、農薬を使用するにあたって避けては通れない問題である
「薬剤抵抗性」について今一度確認すると共に、
農薬を効率的かつ適正に使用するための考え方の一つである
「ブロック式ローテーション」をご紹介いたします。
より効率的かつ効果的な薬剤防除にお役立ていただければと思います。
農薬を利用している限り避けては通れない問題の一つが「薬剤抵抗性の発達」です。
同一の農薬(仮にA剤とします)を連用していると、
害虫の中にもともと少数存在する〈A剤の成分に抵抗性をもつ個体〉のみが生き残り続けます。
その生き残った少数の個体が繁殖していくうちに
A剤に抵抗性を持つ個体が害虫の大半を占めるようになり、
「A剤がの効きが悪い、効かない」という事態が起こります。
同一の薬剤を連用することは、害虫の抵抗性発達スピードを速めてしまい、
効果的な農薬の使用寿命を縮めることにもつながりますので注意が必要です。
異なる商品名でも、中身の成分が同一である農薬もあります。
同一農薬の連用を避けたつもりが、同じ成分の農薬を使用してしまい抵抗性獲得を早めてしまった
という事態を避けるために注目してほしいのが【RACコード】です。
【RACコード】とは、農薬の成分をいくつかの作用機構(作用の仕組み)ごとに分類し、
番号と記号で示したものです。
コードの異なる農薬を組み合わせることで、同一成分の農薬の連用を確実に避けることが可能になります。
各農薬のRACコードは、農薬のラベルまたは農薬工業会HPからご確認ください。
URL(クリックで農薬工業会HPに飛びます):https://www.jcpa.or.jp/labo/mechanism.html
IPM防除(総合的防除)等の農薬以外の防除方法を導入することに加えて、
より効果的な抵抗性管理を行うことが農薬使用の適正化につながります。
そこで意識したいのが、害虫の「世代」です。
ブロック式ローテーションとは、「世代間ローテーション」とも言い、
害虫の1世代=1ブロックとして考えて組むローテーション方法です。
単に輪番式に複数の農薬を使用するのではなく、ブロックの概念を取り入れて使用する農薬を選ぶことで、
気付かぬうちに二つの世代をまたがって同系統の薬剤を使用してしまうリスクを減らし、
より確実かつ効果的な抵抗性管理が可能になるのです。
以上、皆様のより良い営農のため、農薬使用時の参考にしていただければ幸いです。